わたしの好きなお国ことば 古川 康(佐賀県知事)
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唐津生まれの佐賀育ち!唐津のおおらかな自然の中で、元気に育ち、父親の転勤で小学校4年の時に佐賀市へ。







 わかるけど使わない言葉というのがある。佐賀県で育った僕が東京で暮らし始めたとき、耳新しかったのは「道なり」という言葉だった。世田谷でどっちの方向に走っているかわからないようなとき、タクシードライバーから「みちなりでいいんですね」と聞かれ、「みちなり」というのはなんだろうか、と思った。「いきなり」でもなければ「すずなり」でもない不思議な響きの言葉で、ああ、東京にいるんだなあと思ってなんだかおかしかった。
「みちなり」なんて言葉、使わなかったからだ。「平気」もそう。「平気」っていう言葉は使わない。言うとしたら「だいじょうぶ」だ。
 僕の育った文化圏には「横着(おうちゃく)」という言葉がある。大辞泉では「できるだけ楽をしてすまそうとすること」
とあるが・・・ちょっと違う。地域の言葉として「おーちゃく」という場合、「生意気」とか「わがまま」というニュアンスも込められている。イメージ的には「猫」だな。東京とかじゃあんまり使われていないように思う。でも、僕が大人になるまで住んでいた佐賀県ではこんなふうに使われていた。
 たとえば中学一年のときの英語の授業にて。
 先生:How are you?と聞かれたら、I’m fine, thank you.(私は元気です)と答えるんだよ。
 古川:先生、おいたちも人間です。毎日元気じゃなかです。元気じゃなかときはどがん答えばしたらよかとですか。
 先生:このおーちゃくもんが。雨の降っとってもグッドモーニングやろうが。かぜばひいとってもアイムファインサンキューたい(とごつんとなぐられる。)
 僕は結果的にその中学校に(公立だったのに)いにくくなり、別の学校に転校した。
 その編入先の学校にて。
 先生:最近、学校にエレキギターば持ってきよるもんがおる。学校はギターば弾く場所じゃなか。持ってきたらいかん。
 古川:先生、おりゃおかしか。学校にエレキギターば持ってきたらいかんて指導要領に書いてあっとですか。
 先生:そがんおーちゃっかことばいうたらいかん。前に出てこい。(となぐられる)。
 先生からみたら、エレキギターを持ってくる生徒も、それをかばう僕も「おーちゃっか」生徒であったに違いない。「おーちゃっか」生徒のうちの一人は陣内孝則という名前の男だった。彼はその後「ザ・ロッカーズ」というロックバンドでデビューし、いまは俳優として活躍中。あれは中学校で練習したからだよな、陣内。


古川 康氏 古川 康
(ふるかわ やすし)
佐賀県知事
昭和33年佐賀県唐津市生まれ。昭和57年東京大学法学部を卒業、同年自治省に入省。自治大臣秘書官、長崎県総務部長などを歴任。平成15年、日本ではじめてマニフェストを掲げ佐賀県知事選に挑戦、同年4月、全国で一番若くして知事に就任。「オープン」「現場」「県民協働」をキーワードに、「新しい」こと「正しい」ことに挑戦する佐賀県政に取り組む。地方分権新時代を迎え、住民本位の三位一体改革論や東京だけを肥大させない道州制を提唱。
古川康ホームページ: http://www.power-full.com
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