わたしの好きなお国ことば 石丸謙二郎(俳優)
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小学校三年の時。別府湾の海岸にて。




中学生の時。転校ばかりで中学校は3か所経験した。




高校2年生の時。由布山にて。



 大分弁の横綱はなんと言っても「よだきい」であろう。文字で表すのは難しいが、「よだーきぃ」と発音する。大分の人たちは、日常の挨拶ことばとして、それこそ「おはよう」「こんにちは」と同じように「よだきい」を使う。「よだきい」とは「めんどうである」「おっくうである」「疲れている」という意味なのだが。しかし、だからと言って大分県人が皆疲れ切っているというわけではない。大分県人の県民性は、元気で、朗らかで、明るいのが特徴なのだ。
 ふつう、疲れたときには頑張るぞ!と発想するものであるが、大分県人はそんな時「よだきい」つまり「疲れた」と言ってしまうのである。だが、そう言いながら本当に「疲れた」という意味でそのことばを口にする人はいない。「よだきい」とは本来の意味をずらすことによって安全弁のような役割を果たしてくれる、不思議な力をもったことばなのである。一番疲れたときに「よだきい」と言ってみる。そうするとすーっと疲れがとれていくのである。
 「よだきい」の語源説は二通りある。一つは古語の「よだけし」からだとする説。「よだけし」とは、物事の状態が、大げさである、また、めんどうであるといった意味である。もう一つは、かつて殿様が「代は大儀じゃ」と言ったことから転じたとする説。なかなか捨てがたい説であるが、やはり「よだけし」説の方が有力であろうか。
 僕は高校三年生まで大分にいたのだが、大分の中にいたときは「よだきい」ということばのよさ、素晴らしさに気付かなかった。大分を離れ、東京に出てきたとき初めてこのことばのよさ、すごさに気がついたのである。
 「よだきい」は単に疲れたという意味だけではなく、さまざまな場面で使えるマルチプレーヤーのようなことばでもある。以前、大分に帰ったとき立ち寄ったうどん屋に、「ハワイうどん」というおかしな名のうどんがメニューに載っていた。何だろうと思って店の人に聞くと、客が注文してくれると店の者がハワイに行けるうどんだという。何とまどろっこしい名を付けるのかと思われるのだが、こんな時も「よだきい店やな」ということになる。この場合はニュアンスとして若者が使う「かったるい」に近いと思われる。
 大分弁には相手に逃げ場所をつくってあげることば、元気になるこつを教えてあげることばが少なくない。その代表である「よだーきぃ」を口にしている限り、大分県人はくじけたり落ち込んだりすることはないであろう。


<近況>
この秋10月29日(土)より、出演した映画「春の雪」(主演・妻婦木聡 竹内結子)が公開。
映画「春の雪」公式HP http://harunoyuki.jp/
10月中旬には「世界の車窓から あこがれの鉄道旅行 Vol.2」が発売予定。
また「世界の車窓から あこがれの鉄道列車の旅 Vol.1 ―遺産と古都をめぐる−」は テレビ朝日出版より絶賛発売中。価格: ¥1,650 (税込)「世界の車窓から」HP http://www.tv-asahi.co.jp/train/



石丸謙二郎氏 石丸謙二郎
(いしまる・けんじろう)
俳優。1953年、大分県生まれ。父親の仕事(銀行員)の都合で、大分県内を幼稚園を3つ、小学校を4つ、中学校を3つ・・・・と転校ばかり経験。当時は友達ができると転校するという状況が悲しかったが、今思えば、その転校生活のおかげで大分のどの地域も大体わかるという特権を得た・・・・と思っている。日本大学芸術学部中退後、つかこうへい事務所公演に参加。その後、活動の場を舞台だけでなく映画・TVにも広げる。第1回目からナレーションを勤めている長寿番組「世界の車窓から」は今年18年目。そのほかドラマだけでなく、スポーツ番組「SASUKE」「スポーツマンNO.1」などにも出演。
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