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今回は久間前防衛相の辞任につながった「しょうがない」、「しようがない」の用例を紹介します。いうまでもありませんが、「しようがない」「しょうがない」は、人物をけなすときにも慰めるときにも用いられる言葉であるため、口にするときは十分な注意が必要です。
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「しょうがない」は「しよう(仕様)がない」の音が変化したものです。日常的で軽い感じがする「しょうがない」は公的な場面では用いないほうが無難です。
「し」は「する」の連用形であり、基本的には、やりようがない、方策がない、という意味で用います。
能力のなさを暗示する
*うつり香〔1910〕〈近松秋江〉「いったってしやうがない」
その解説
小説の主人公が、夢中で惚れている女(不法の売春婦)が留守中自宅に訪れた理由を聞いたところ、彼女は用例のように答えたのでした。
本当は金のことで訪れたのですが、主人公は金に関しては「いったってしょうがない」相手だと、あきらめきったのです。もちろん主人公はこれを聞いて内心腹を立てます。
このように「しょうがない」は、問題を解決する能力がないことを暗示する場合があります。
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「嬉しくてしょうがない」「ムカついてしょうがない」など、ある感覚・感情を持たずにはいられないことを表す場合もあります。現代このような使い方では「しょうがない」と発音するのが一般的です。
感覚の強さを示す
*女生徒〔1939〕〈太宰治〉「いけないことだけれど、伊藤先生がばかに見えて仕様がない」
その解説
「伊藤先生」は美術の先生で、主人公は絵のモデルをつとめましたが、「ねちねちして理屈が多すぎる」先生に対して、「何しろサッポリしないのは、ゲッとなりさうだ」と思いながらポーズをとっていたのでした。
「ばかに見える」でも立派な悪口ですが、「ばかに見えて仕様がない」はそう思う自分を止めることができないという意味もこめられ、より強烈な悪口になります。しかも、そう思わせる相手がよくない、というニュアンスも含みます。
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役に立たないもの、手に負えない人物に対して「しょうがない」を使うこともあります。怒りでカッカしながら役に立たない本人に投げつけることもないわけではありませんが、本人がいないところで関係者がため息まじりに、あきらめや軽蔑の感情をこめて使うのが一般的です。
役に立たない人物をけなす
* 松翁道話〔1814〜46〕一・上「奉公するにも、子供の時から大家にうかうか暮したものは、どうも仕様のないものぢゃ」
その解説
『松翁道話』は石田梅岩の弟子による、教訓的な随筆です。家柄のいい大家で子供の頃から奉公するのがよくない理由を、松翁は「御公家様の落胤の様な心持に成って、気ばっかり高ぶ」ってしまい、やがては家に災いをもたらすためといいます。
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「しょうがない」は、相手の欠点や失敗をやさしく許す気持ちを表す場合も少なくなりません。とくに異性に対して微笑みながら言う場合は愛情の表れと考えたほうがいいでしょう。
相手を許す気持ちを表す
*花束の時間〔1909〕〈川端康成〉「しやうがない方だわね、Nさんて。<略>だけど、女のきゃうだいのおありにならない方には、私達のすることなすことが、とてもお珍しいのには、笑はずにはゐられないわ」
その解説
『花束の時間』は、昭和4年に『令女界』という女性雑誌に掲載された短編小説です(全体が親友への手紙になっています。川端康成は乙女チックなこの作品を封印したかったのか、生前は自身の著作集に収められませんでした)。
「Nさん」を「しやうがない」といいながら、主人公とその親友はどちらも彼に恋をしています。
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このような相手を許す意味の「しょうがない」は、けなす意味の「しょうがない」は区別が難しいことが少なくありません。また、相手を許すという、その目線自体に反発する人もあるかもしれません。
さらに、「終ったことはしょうがない」など、失敗を水に流す意味で使うこともありますが、自分の側に非があるのなら「しょうがない」は開き直りの弁として受け止められます。
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