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「保存に便利」「電子レンジだけで調理できて便利」などの理由で人気があった冷凍食品ですが、毒入り餃子事件をきっかけに売れ行きを落としているそうです。そもそも「便利」の語は食品にはいかがなものか、なのであります。
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現代人が「便利」で連想するものは、インターネットやコンビニなどかもしれません。しかし、中世の知識人なら厠もしくは厠で出すものだったでしょう。
当時の「便利」は大小便をすることでした。有名な『徒然草』にもそちらの用例があります。
兼好法師の「便利」
*徒然草〔1331頃〕一〇八「一日のうちに、飲食(おんじき)、便利、睡眠(すいめん)、言語(ごんご)、行歩(ぎゃうぶ)、やむことを得ずして多くの時を失ふ」
その解説
時間が貴重であることを語る部分からの引用で、現代語にすると「一日のうちに、食事、排便、睡眠、会話、歩行など、やむを得ないことで多くの時間を失ってしまう」。
食事や睡眠と並べるほど「便利」は長くかかるものでないようにも思いますが、吉田兼好さんは長くかかったのか、大小のすべての時間を合計していったものか、謎がふくらみます。
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江戸時代に入ると「都合がいい」「役に立つ」といった意味の用例が増え、排便の用例は減っていきます。19世紀には『農具便利論』という農業本も刊行されました。
江戸時代の便利グッズ紹介
*農具便利論〔1822〕上「江州鋤<略>少しくぐみありて畦底の土をすくうには、至て便利にして」
その解説
鋤は昔のショベルにあたりますが、いくつかの種類がありました。近江(滋賀)の「江州鋤」は少し反ったような形です。琵琶湖博物館のサイトでそのイラストを見ることができます。
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19世紀の前半の段階で「便利」道具への興味や関心を十分に持っていた日本人は、開国後に西洋の文物を表現するにあたり「便利」を連発するようになります。
明治の「便利」
*西俗一覧〔1869〕〈黒沢孫四郎訳〉「手紙は奇麗なる白紙に認むべし。且つ系引ある紙にても系引なき者にてもよしといへども、系引ある方便利なるべし」
その解説
『西俗一覧』は西洋の衣食住の習慣を解説した書物。現代人が何も感じずに使っている罫線入りの便箋も、明治維新直後の人々には「これは便利だ!」と思える品物だったようです。巻紙に筆で手紙を書くのは当時の人にもラクではなかったのでしょう。
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「便利」な西洋文明をどんどん吸収する中で、巻紙の手紙のような扱いにくいものはすたれていきます。20世紀に入ると桂離宮の再評価に一役かったブルーノ・タウトなど、外国人に日本の美を大切にするよう忠告されることも増えていきました。そんな中で、「便利」を堂々擁護したのが坂口安吾でした。
「便利」を求める日本の私
*日本文化私観〔1942〕一「伝統の美だの日本本来の姿などといふものよりも、より便利な生活が必要なのである。京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困るのだ」
その解説
ここだけ読むと伝統破壊を推奨するかのようですが、そうではなく、伝統の保存よりも「生活の必要」を優先すべきたというのが彼の主張なのです。
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第二次大戦後の日本は、混乱期を脱出した後ますます熱心に「便利」を目指しました。高度経済成長期の政府がとくに「便利」を目指した分野が、交通です。
「便利」で快適
*第七十一国会参議院建設委員会会議録第十二号〔1973〕「居住地域を起点として、だれでも、どこに行くにも便利で快適で安全な交通を保障する道路政策こそ国民の望むところであります」
その解説
今話題の道路政策ですが、大臣が言うことは当時も今もそんなに変わらないことがわかります。
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