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福田(康夫)内閣は「崩壊寸前」と呼ばれるようになりました。崩壊するだろうと決め付けるのは一種の悪口といえるでしょう。今回はこの「崩壊」の用例を4つ紹介します。
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崩れる、壊れる、を重ねた「崩壊」は、江戸時代すでに知識階級には用いられた漢語です。明治以降は災害報道でおなじみの語となり、一般にも広がりました。
建造物の「崩壊」を肯定する用例
* 大和古寺風物誌〔1943〕〈龜井勝一郎〉法輪寺「さうかと云って華美な改修はふさはしくない。全く崩壊しない程度で、しかし崩壊して行くやうないまの姿をそのままとどめてほしい」
その解説
飛鳥時代に創建された法輪寺は、第二次大戦以前は十分な修繕がなされず、荒れが目立っていたようです。しかし、「すべて古典に対する真の愛情は廃虚への感傷に始まる」という著者は、寺の崩壊を悲しむことも仏心のスタートとして重要であると考えていました。
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建物以外でも、まとまりが失われ、ばらばらになった状態を表すのに「崩壊」を用いることがよくあります。「ソ連崩壊」はその代表的な例です。
運動崩壊の用例
*頽廃の根源について〔1953〕〈小田切秀雄〉二「かれらが各個撃破されたときに運動全体はただちに崩壊した」
その解説
「かれら」、すなわち『蟹工船』の小林多喜二ら地下活動を行った作家が、投獄などで活動不能となったうえに、多くの作家が転向し、プロレタリア文学運動を続ける人が世間にいなくなったことを「崩壊」と呼んでいます。
左翼も右翼も活動家は「崩壊」のような画数の多い漢字を好む傾向が強く、彼らのチラシや看板などでも「崩壊」がしばしば見受けられます。
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個人の内面について「崩壊」を使うことは、日常の会話ではめったにありません。たとえば、「彼女は傷ついたみたい」のほうが「彼女は崩壊したみたい」よりも日常的です。
しかし、若い世代を中心に、いつもとは違う奇妙な言動をすることを「壊れている」といい、その意味で「崩壊」を使う人も増えています。
被疑者の「崩壊」の用例
* ある小官僚の抹殺〔1958〕〈松本清張〉二「彼の主張を支えた精神の支柱は強靱さを失い、今にも崩壊しそうだった」
その解説
戦後の砂糖疑獄事件を素材とする作品からの用例。「彼」は賄賂を贈った企業団体の理事長です。彼は自分だけで業務上横領の罪をかぶるつもりでしたが、取り調べによって消耗し、ついに自供します。
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「崩壊」は、「内閣崩壊」のように四文字熟語にしても語呂がよく、「バブル崩壊」のようにカタカナと組み合わせても見栄えがします。
そのためか、ひと昔前なら「衰退」あるいは「荒廃」を使ったであろう場面でも使われるようになりました。
今どきの崩壊
* 第百六十二回国会衆議院憲法調査会議録〔2005〕第四号「私は、家庭崩壊、地域崩壊あるいは国家崩壊の危機に瀕しているという認識を持たなければならないのではないかと考えております」
その解説
憲法改正を支持する議員の発言より。彼はこれらの「崩壊」を防ぐためにも憲法改正をすべきだと彼は述べています。そこで、国会議員が3つの「崩壊」にどれほど関心を持っているのか過去5年間分を検索してみると、「家庭崩壊」で17件、「地域崩壊」で6件、「国家崩壊」で2件がヒットしました。
むしろ、彼が挙げなかった「医療崩壊」(39件)や「学級崩壊」(57件)が多く、このふたつが四文字熟語として社会的に定着したことがうかがえます。
ちなみに「年金崩壊」はたった1件、「国会崩壊」と「内閣崩壊」はともに0件でした。
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