立ち読みコーナー  
  【はじめに】  

 平成十三年、十二月、『日本国語大辞典』の第二版は、第十三巻を刊行して完結した。毎月一巻ずつ出すというのは、編集側にとっては大変であったが、何とか予定を守ることができて一安心した。しかし、できあがってみると、手直しをしたい箇所や用例を添えたい項目などが目につき、第三版へ向けての私なりの作業を始めている。
 それと同時に、仕事にひとくぎりついたこの際、ここに至るまでのいきさつを明らかにしておくことは、大きな辞書に長年携わってきた者の責任ではないかとも考えるようになった。
 従って、この辞書の初版ができるまでの紆余曲折と、第二版が初版より成長した点、なお残っている課題などが話の中心になった。さらに、こういう辞書では最も重要と考えられる用例及びその資料に関する話を添えた。また、この辞書のもととなった『大日本国語辞典』と、その編者である祖父、それを受け継ぎながら早死にして志を果たせなかった父についても、この機に、これまであまり知られていない事実にまで及んで書いておくことにした。
 祖父や父に関しては、かつて拙著『国語辞典にない言葉』の中で触れたことがあり、それとなるべく重ならないように心がけたが、話の流れによって繰り返さざるを得なかった箇所もあることをお断りしておきたい。
 また、祖父の生涯と業績については『近代文学研究叢書』57(昭和女子大学近代文学研究室、昭和六十年三月刊)に収められた「松井簡治」(野々山三枝執筆)に詳しく述べられているので、それに譲った事柄も多い。
 このたび本書をまとめるにあたっては、第二版の編集の中心であった、佐藤憲正、藤波誠治、佐藤宏、三氏のお勧めと小学館の御厚意によるところが大きい。心から感謝の意を捧げたい。

 平成十四年十一月

松井 栄一


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