立ち読みコーナー  
   【「メリーモナークフェスティバル」'98 PartU フラの最大イベントに臨む】
    〜Merrie Monarch in 1998 The World's Premier Hula Competition〜

メリーモナークフェスティバルは、ハワイ島のヒロで毎年4月に開催されます。ハワイで最も由緒あるフラの大会の1つで、地元のテレビでも3日間にわたり、生中継されます。メリーモナークに世界中から集まる観客、大会関係者、そして報道陣で島中の宿泊施設は1年前からの予約で満室状態です。日程が公表されてから予約を取るのは至難の業です。リゾートホテルに泊まる観光客とは対照的に、キャンプ場にテントを張って大会に臨むハラウもいます。大会会場の「カナカオレ・スタジアム」は屋根はあっても半分屋外のような競技場とあって、決して座り心地のよい観客席とはいえませんが、それでも全席前売り完売で、地元住民でさえチケットの入手が困難です。大会にはハワイ在住、またはハワイ出身のクムしか出場資格がないことが、規定の少ないカメハメハ・フラ・フェスティバルと大いに異なる点です。
私達のハラウでは、大会の前年10月ごろにクムによりダンサーが選出されます。でも、12月までは、アメリカ本土での大会や日本公演、他にもクリスマスコンサートや資金集めのラウラウ作り、洗車、クリスマスツリーセールなどに比重がおかれるため、実際に通常のクラスとは別に設けられた大会用の練習が始まるのは、年が明けてからなのです。と言っても、クムが選んだ大会用のチャント(詩詠)を習うのはまだまだ先の話で、当分は4時間余の基礎の集中特訓といった練習が続きます。大会が近づくにつれて練習の日が増え、週末も休日も返上し、毎晩、になっていくのです。

大会の約2週間前に、前章で紹介したカホオラベのようにキャンプをして、1週間前にはカプに入ります。カプとはハワイ伝統の「戒律」です。大会の成功を祈願してクムの家で儀式が行われます。戒律の中には、禁欲や食事制限も含まれます。「魚を食べる」のは、群れをなして泳ぐ魚のように、ダンサー全員が同じ顔をして同じように踊るためです。また、「蛸を食べてはいけない」のは、滑って転ばないように、という配慮からです。受験の前にとんかつを食べる日本の験かつぎに似ていますね。

私達のハラウは、大会直前にコクア(サポートをしてくれる人達)やミュージシャン達とハワイ島に出発し、軍のキラウエアキャンプ場に大会終了まで滞在します。各ロッジにはダンサーが4人から6人宿泊します。ヒロまでは車で片道1時間半。フェスティバルのムードいっぱいのヒロから離れることで、ダンサー達がチャントに集中できることを期待して、あえてクムはいつもこの場所を選びます。
文字どおり、火山の火口近くのため標高が高く、ヒロより格段に温度が下がります。練習から部屋に戻ると、まず薪で暖炉に火を入れなければ寒くて何もできません。朝食はキャンプの食堂で食べますが、昼食と夕食は、練習とレイメーキングや衣装のアイロンがけなど準備の合間をぬってコクアが作ってくれた食事をとるのです。
キャンプに着いた翌日は、アウアナのチャントに出てくるプウアナフルという場所などを一日かけてバスで回りました。また、恒例のキラウエア火口でのチャントを捧げました。これは、フラの神に捧げ物をするためで、大会に参加するハラウはほとんどこれを行ないます。火口付近はジャケットがないと昼間でも寒いのですが、カヒコの衣装を着て、ごつごつとした歩きづらい岩場の上を裸足で歩いて進みます。大会で練習の成果を出せるよう祈願してマイレレイをペレに捧げます。
各ハラウの楽屋は、会場近くの建物などが割り振られます。私達の楽屋は大会会場の近くの体育館です。大会当日は午後早くから詰めて支度をします。テレビで中継を見る余裕などほとんどありません。
(以下略)

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