立ち読みコーナー  
  【「シンジケート」より】  

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

モーニングコールの中に臆病のひとことありき洗礼の朝

抱き寄せる腕に背きて月光の中に丸まる水銀のごと

「猫投げるぐらいがなによ本気だして怒りゃハミガキしぼりきるわよ」

「とりかえしのつかないことがしたいね」と毛糸を玉に巻きつつ笑う

「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪に背中に

「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」

春雷よ 「自分で脱ぐ」とふりかぶるシャツの内なる腕の十字

脱走兵鉄条網にからまってむかえる朝の自慰はばら色

呼吸する色の不思議を見ていたら「火よ」と貴方は教えてくれる

抱きしめれば 水の中のガラスの中の気泡の中の熱い風

はしゃいでもかまわないけどまたがった木馬の顔をみてはいけない

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい

愚かなかみなりみたいに愛してやるよジンジャエールに痺れた舌で

「唾と唾混ぜたい?夜のガレージのジャッキであげた車の下で」

「自転車のサドルを高く上げるのが夏をむかえる準備のすべて」

抜き取った指輪孔雀になげうって「お食べそいつがおまえの餌よ」

くちうつしのホールズ光る地下鉄の十色使いの路線図の前

朝の陽にまみれてみえなくなりそうなおまえを足で起こす日曜

終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて

声がでないおまえのためにミニチュアの救急車が運ぶ浅田あめ
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