立ち読みコーナー  
  【「蛸足配線」より】  

透き通る受話器のなかのカラフルな配線を視る勃起しながら

「写真、一枚もないんだ、ごめんね」とチューインガムの匂いの夜に

逢いたいのいますぐ来てという声をかこむ熱帯の果実を想う

惑星別重力一覧眺めつつ「このごろあなたのゆめばかりみる」

ひらがなっきゃ読めないひとの手をひいてあかるいあかるい月の道です

ジューサーとミキサーの墓場想いつつおまえの脚を折り曲げる夜

両膝をついて抱き合う真夜中のフリーザーには凍る食パン

はんだごてまにあとなった恋人のくちにおしこむ春の野いちご

「腋の下をみせるざんす」と迫りつつキャデラック型チュッパチャップス

アトミック・ボムの爆心地点にてはだかで石鹸剥いている夜

山脈を越える新型大砲を抱いて微笑むミス・ナチス・ドイツ

陽溜りにピアノの椅子を持ちだして「ねぐせあたま」と題する素描

夏の川きらめききみの指さきがぼくの鼻血に濡れてる世界

死んでしまった仔猫のような黒電話抱えて歩む星空の下

セロテープで直した眼鏡を掛け続けクラスメートを愛するタイプ

夏空の飛び込み台に立つひとの膝には永遠のカサブタありき

フランスのフリスクだけはくわせるな/くるいはじめるしまうまのしま

指さしてごらん、なんでも教えるよ、それは冷ぞう庫つめたい箱

瓦斯タンクにのぼってみたい、と囁かれ、ぼくらはこんなにも、風のなか
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