立ち読みコーナー  
  【若葉 青葉】  

初夏    若葉 青葉

 梅が散り、桃の色が褪せ、桜も散りつくせば、文字どおりの百花繚乱の春も終わり、こんどは一転して緑一色の若葉が野山をおおう。しかし緑一色といっても、そこには限りない濃淡の差、明暗のニュアンスがある。葉の緑色をつくっているのはクロロフィルで、植物色素には他に黄色をつくるカロチノイドがある。この二つの物質の割合の変化によって、葉の色はさまざまに変わるのである。盛夏の青葉では、およそクロロフィルが八、カロチノイドが一の割合で含まれている。その割合は日照量で変わるので、一本の木の葉でも部分によって、わずかずつの緑色の変化がある。
 若葉は「万葉集」にはなく、平安朝になって紫式部などによって詠まれ始める。初め草と樹木の若葉は区別されていなかったが、近世の俳諧あたりから区別されるようになり、若葉といえば樹木のそれをさすようになった。個々の木の名について柿若葉、椎若葉、樫若葉というふうにいう。

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