第41回 最近よく耳にする「なので~」の使い方

「年末は皆さん何かとお忙しいと思います。なので、出欠の御返事はなるべく早めにいただけると助かります」
 というような「なので」の使い方を最近よく耳にします。言葉の感じ方にも個人差がありますから、別に気にならないという方もあるでしょうが、何だか違和感を覚えるという声も多いようです。
 もっとも、手紙などの書き言葉の場合に使用する例は少なく、どちらかというと会話の中、それもくだけた雰囲気の会話にとどまらずに、やや改まったビジネスなどの会話でも使用されることの多い言葉です。
 
 ではこの「なので」とは、そもそもどのような意味や働きをもつ言葉なのでしょうか。


「なので」は「連語」といって、゛断定の助動詞「だ」の連体形=「な」゛や、゛形容動詞の連体形活用語尾=「な」゛に、゛接続助詞「ので」゛をつけたものです。意味としては、「…だから」「…であるから」といったもので、「かぜなので学校を休んだ」「故障の原因が明らかなのですぐに直せます」(『デジタル大辞泉』小学館より)というのが、本来の使い方です。


 ですから、以下のようにひとつの話が終わったあとで、接続詞のような形で「なので」を文頭にもってくるのはやはりおかしいものです。


A 「明日は忘年会だ。なので、帰りが遅くなる」
B 「来月の予定が決まらない。なので、まだ返事ができないんです」


 では、このA、Bの「なので」を適切な形に言い換えるとしたら、どのような表現になるでしょうか。


<言い換え例>
A 「明日は忘年会なので、帰りが遅くなる」
B 「来月の予定が決まらない。だから、まだ返事ができないんです」


 BもAと同じように一文にして、B「来月の予定が決まらないので、まだ返事ができないんです」「来月の予定が決まらないものだから、まだ返事ができないんです」という言い方もできます。また、一文につなげないのであれば、「だから」以外にも、「ですから」「そんなわけで」「その関係で」「そのため」「よって」「それにより」などの言葉も意味としてはあてはまります。しかし、「そのため」「よって」「それにより」などは、書き言葉という印象が強く、特にこの例文の前後の言葉とは調和がとれないので、「ですから」「そんなわけで」「その関係で」などにした方がおさまりがいいでしょう。


 また、「なので」が使われる背景にはつぎのようなことも関係しているように思われます。


「準備の都合がありますので、恐れ入りますが12月10日までにご返事をお願い申し上げます」
「準備の都合がありますから、恐れ入りますが12月10日までにご返事をお願い申し上げます」


「から」は何となく、「(準備の)都合」というのは自分の考えによるものという部分が多いように受け取れます。一方、「ので」のほうは、自分だけの考えや都合というよりもやや第三者的な立場や状況も加わり、いくらか語感がやわらぐという印象を与えます。
 このような語感、ニュアンスの違いが、「ですから」よりも「なので」が使われやすい要因のひとつと思われます。
 しかし、語感のもつやわらかさはもちろん大切ですが、「なので」は改まった場面や書き言葉には不向きです。場面に合わせて「ですから」などに言い換えることが、不快感を防ぎ、よりふさわしい言葉づかいにつながる工夫と言えるでしょう。


第41回 最近よく耳にする「なので~」の使い方
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