第十七回 「ございます」と「いらっしゃいます」①

 今年の年賀状の言葉には、復興や人との絆(きずな)を表すようなさまざまな言葉が見られました。久しく会っていない知人から元気で暮らしている様子を伝える賀状を受け取り、安堵した人も多かったのではないでしょうか。
 さて、年賀状に書き添えるひと言は人によっていろいろですが、次のような言葉を目にしたことはありませんか?
「ご無沙汰をいたしておりますが、お元気でございますか?」
 この最後の「ございます」の使い方は間違いではないか?正しいかどうか迷うという声を時折聞くことがあります。「ございます」を、相手について使うのは失礼なのではないかというのが迷う理由のようです。
 国語辞典を引くと、「ございます」は、動詞または補助動詞として使われる「ある」の丁寧語とされています。
 動詞の場合をまず例に挙げると、「資料がある」→「資料があります」→「資料がございます」の順に丁寧な表現になり、動詞の「ある」をより丁寧にした言葉となっていることがわかりますね。また、補助動詞としては、「(こちらに資料を)用意してある」→「用意してあります」→「用意してございます」の順に丁寧になり、補助動詞「ある」の丁寧語として用いられます。先の「お元気でございますか?」もこの例に入りますね。このように考えますと「お元気でございますか?」は丁寧語という点では誤りとは言えないわけですが、次のような点で注意が必要です。
 「ご両親はお元気ですか」と聞かれて「はい、元気でございます」と答えたり、「先日お伺いいたしました井上明美でございます」「あちらにおりますのが私の母でございます」と言ったりすることがありますね。この「ございます」はいずれも自分側を高めているのではなく、聞き手に対する丁寧表現として使われています。これらの例に見られるように、「ございます」は丁寧語ではありますが、どちらかと言うと自分側に関することに多く使われる傾向があります。
 それに対して、相手側へのより敬意の高い尊敬語としては「いらっしゃる」を用いることが多いでしょう。「いらっしゃる」は、「~である」「~ている」の尊敬語で、「野中様でいらっしゃいますか?」「いつもお美しくていらっしゃいますね」などのように使われます。このように相手側に使う場合は「ございます」よりも「いらっしゃる」を用いるほうが言葉としても落ち着きますし、より敬意の高い表現になっていると感じます。先の例文もその点から考えますと、「お元気でいらっしゃいますか?」が相手側への尊敬語としては、よりふさわしいという印象を与えるでしょう。
 受付や電話などでよく耳にする「○○様でございますね」という表現も、このように「ございます」や「いらっしゃる」などの個々の言葉の意味をよく知った上で使えば、より適切な失礼のない表現を選ぶことができるものです。迷ったら、ちょっと辞書を開いてみるのも正しい敬語を使うコツと言えますね。

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