第 7回 「○回生」VS「□年生」は、京大 VS 東大の戦いだった!

第 7回 「○回生」VS「□年生」は、京大 VS 東大の戦いだった!

 西日本の大学に通っている学生に「何年生?」と尋ねると、「○回生です」と答える学生が多い。うーん、質問には答えているが、こちらは「何年生」と聞いているのに…。飛行機に搭乗した際、「ブランケットいかがですか?」とやさしく微笑みかける客室乗務員に、わざと「ひざ掛けお願いします」と応じる自分と同類今回の一枚:クリックすると大きくなりますならばなかなかあなどれない奴ではないのか。ほんのささやかな受け答えに、大げさにあれこれ思い巡らしてはみたものの、京都大学のカリキュラムを見れば、「履修年次」に相当する欄には堂々「回生」と記されているのだ。「1回生のガイダンス」「2回生の必修科目」など、まさに「回生」は大学当局のお墨付きを与えられているのだ。

 実はこの「回生」、水面下では東大VS京大の密やかな戦いが関わっていたらしい。東大はそれぞれの学年で所定の単位を取得しないと進級できない制度であるのに対し、京大は留年せずに学年進行できるため、入学してからの在籍年数を示す意味で「回生」という用語を使用したのである。そうか、人が亡くなって3年経てば「3回忌」と同じことなのか、などと言ってはしかられそうである。

 京大の影響を受けた関西の大学を中心に、西日本では「大学○回生」との呼び方が普通に使われているのだ。先日たまたま学生が見ていたキャンパスファッション特集の雑誌を覗いたら、紹介されている写真に添えられたプロフィールに、関東の学生は「××女子大学○年生」、関西の学生は「××女学院大学○回生」などと使い分けがなされていて感心したものだ。いやいや感心している場合ではない、東京でもこれだけ「大学○回生」が認知されているとなれば共通語の地位も脅かしかねない。日本語の歴史をたどれば、「明後日の翌日」を意味する「しあさって」や、魚の「うろこ」など、もともと西日本の方言だった語形が共通語の地位を獲得した例は少なくないのである。

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