第10回 信号が“パカパカ”する?

 名古屋を訪れる度に感じることは、とにかく道幅が広い。横断歩道を渡るときでも、はたして青信号の間に渡りきれるのかと不安になり、ついつい早足になってしまう。ちょっと油断してのんびり歩こうものなら、赤信号へのカウントダウン、青の点滅が始まってしまうのである。今回の一枚:クリックすると大きくなります

 そんな時、子供の手を引きながら小走りで横断歩道を渡る母親の声が耳に入ってきた。「信号パカパカしとるで、ちゃっと渡らんと!」。「ん?」、思わず耳を疑った。パカパカといったら牧場を馬がかろやかに駆けている様子ではないのか。「ぱかぱかぱかぱか はしれよこうま」と、童謡「こうま」を口ずさんでみるが、どうも子馬の走るリズムと信号の点滅とはタイミングが合わないような気がしてならない。もしかしたら名古屋の信号の点滅は東京と違ってゆったりしているのか。信号を何度確認しても、その疑念をあざ笑うかのごとく東京と同じように“チカチカ”点滅しているのである。

 信号だけではない。長期間使って古くなった蛍光灯が切れる直前に点滅を始めると、「蛍光灯パカパカしとるで替えてくれん」と言うらしい。車のハザードランプ、留守番電話の着信ランプ、カメラのストロボ、停電時のビデオの時計表示…、愛知ではなんでもパカパカしてしまうのである。ならば、ウルトラマンのカラータイマーもパカパカするのだろうか、などと疑問は尽きない。

 このパカパカ、愛知だけではなく隣接する岐阜や静岡の一部でも同様の使い方をするようだ。

 ところで、遠く離れた宮崎でも信号はパカパカと点滅するらしく、たまたま宮崎から愛知へ転居したために、共通語だと信じて疑う余地が無かったというつわものもいるのである。

 光がまぶしいときに、共通語では「目がチカチカする」と言うが、さすがに「目がパカパカする」とは言わないようだ。「パカパカ=チカチカ」と規則どおりにならないところに方言の奥深さを感じてしまうのである。

第10回 信号が“パカパカ”する?