第21回 筋肉痛を表す方言

 情けないことに、久しぶりに自転車をこいだら案の定、ここ二、三日筋肉痛が治らない。特に太もものあたりがぱんぱんにはって、階段の上り下りもひと苦労なのである。今回の一枚:クリックすると大きくなります

 この筋肉痛の状態を、京都や大阪を中心とした関西圏では「みぃいる」とか「みぃはいる」と表現する。「よう歩いて、みぃいってしもた」「こんなキツイ運動したら明日からみぃはいるわ~」といった具合だ。『日本国語大辞典』によれば、この「身が入る」という言い方は、江戸時代の中頃から「筋肉が疲労してこわばって痛む」意味で使われていたらしい。古語が方言に残っているケースであるが、関西圏では日常的に使われている。長野や四国でも使うようだ。自転車に乗って坂道にさしかかると、思わず立ち上がってペダルを踏むという行動に出て身が入ってしまうが、その結果「身が入って」辛くなるのだからなんかややこしい。

 滋賀では「身ぃ張る」、兵庫では「身ぃがいく」ともいうらしい。

 関西や中国地方の一部では「使い痛み」という言い方もある。「使いすぎて筋肉疲労を起こした状態」ということであろうが、とてもダイレクトな表現でわかりやすい。ためしに関西圏の整骨院や接骨院のHPをインターネットでたぐってみると、診療内容の欄に、肩こりや腰痛と並べて「スポーツによる使い痛み」などと堂々と掲げているところが多いことに驚かされる。

 福岡では、「昨日ボウリングしたけん、足がこわっとー」のように筋肉痛になることを「こわる」という。佐賀や熊本など九州で広く使われるようだ。この「こわる」は「固くなる」という意味の古語「強(こわ)る」が残っているケースだ。「身体の筋肉が疲れて固くなる」ことだと言われればわかりやすい表現だ。

 いずれにしても、古語が各地で共通語のように日常的に使われていて興味深いが、運動しすぎると筋肉痛になってしまう状況は、昔も今も変わらないんだなあと感慨にふけってしまうのである。

第21回 筋肉痛を表す方言