第24回 機械が、“めげ”たり“やぶれ”たりする?

「パソコンめげた!」 と言っても、岡山出身者にとっては、決してパソコン講習会で思うようにいかず気持ちがくじけてしまったわけではない。岡山では「壊れる」ことを「めげる」と言うのであ今回の一枚:クリックすると大きくなりまする。中国地方では広く使われており、兵庫県の西部や徳島まで広がりを見せている。「携帯めげた」「デジカメめげた」「自転車めげた」、とにかく何でも“めげる”のである。

「めげる」は江戸時代の文献に用例が見られるが、もともとは「壊れる」の意味の方が古く、共通語で使われる「気力が失われる」という意味は後に生まれたようである。つまり、古い用法の名残というわけだ。

 山口では「時計やぶれた!」。「紙でできているの?」というツッコミを入れたくなる。「やぶてる」という言い方もある。三重でも「やぶれる=壊れる」は伊勢の古いことばとして意識されていたようだ。この「やぶれる」も平安時代から使われている古いことばであるが、「裂ける」意味よりも「壊れる」意味の方が文献に登場する時期は早い。「めげる」と同様に古い用法の名残である。奄美・沖縄の一部では、「やぶりゅい」「やぶりぃ」などと形を変えて残っている。

 仙台では「うわっ!ビデオちゃけた!」。北海道の一部や北九州でも使われていて、まさに周圏分布を呈している。なんと東京の多摩地方でも方言と気づかれずに使われているのだ。この「ちゃける」はおそらく「裂ける」が変化したのだろう。ただ、文献資料に「壊れる」意味の「裂ける」が登場しないのは、早い時期に「ちゃける」という形が一般庶民の話しことばとして広まっていたためではないだろうか。

 いずれにしても「裂ける」は、「破損して機能が損なわれる」という点で「破れる」や「壊れる」と同類なのである。

 和歌山の「もじける」も古語だ。「この時計、もじけてもた」のように使われる。400年以上前にイエズス会の宣教師が編纂した『日葡辞書』には、「物がよじれて取れる、あるいは、抜ける」と記されている。

 高知や隣接する愛媛の一部では「ちゃがまる」。愛媛県南予地方に位置する内子町のレトロバスに付けられた名前が、なんと「ちゃがまる」!!イギリス製のバスで、古くてよく故障することから名付けられたらしい。故障の原因はイギリス製かそれとも古さなのか??

第24回 機械が、“めげ”たり“やぶれ”たりする?