第25回 「しかも」「でら」「てんぽ」「ぶち」…強調表現は「とても」だけではない

 「しかも旨い!」。「価格が安い上に美味しい」という意味ではない。ましてや「鹿の肉も美味しい」というわけではない。新潟の「しかも」は「とても」に当たる強調の表現なのである。「量が多い」とき今回の一枚:クリックすると大きくなりますには「しかもか食べる」のように使う。何とも紛らわしい。

 名古屋に場所を移せば「でらうま」。

 1995年から97年にかけて製造されたKIRINの名古屋工場限定生ビールの名称にも使われている。この缶ビールの発売によって名古屋の「でら」が全国区の流行語として注目されたのである。この「でら」、実は新しい方言で、もともと関西の強調表現「えらい」に、「ど真ん中」「ど田舎」と言うときの強調の「ど」が付いた「どえらい」が変化したことばなのだ。まさに強調に強調を重ねた最強の強調表現だ。名古屋の市長が「どえりゃー」と言ってる姿はテレビでもおなじみだろう。岡山でも「でぇーれぇー」の形で使われている。

 ちなみに「えらい」には「疲れた」の意味もあるので、「とても疲れた」ときは「えらいえらい」とえらいことになってしまう。

 石川県の加賀地方では「てんぽに旨い!」となる。デパートの駅弁大会で見つけたのが、JR北陸本線の加賀温泉駅で販売する「てんぽにぎゅうぎゅう弁当」。牛肉が“ぎゅうぎゅう”たっぷり詰まっているという洒落たネーミングはユーモアのセンスが“てんぽに”すばらしい。「運にまかせて思いきってすること。」を表す「てんぽ」に由来することばで、室町時代の古語の名残だ。

 「めっさ」「めっちゃ」「めちゃ」「むちゃ」「むっちゃ」「ものすご」「ごっつい」、大阪を中心とした関西圏にはバラエティが豊富だ。「めっちゃ好きやねん!」などと言われた日にはグッときてしまう。松浦亜弥も「Yeah!めっちゃホリディ」という曲を歌っていた。

 広島、山口では「ぶち旨い!」。山口県人の御用達は、(株)シマヤの味噌、その名も「ぶちうまい」。この「ぶち」は比較的新しい方言であるが、もとの形の「打ち」は下に付く動詞の意味を強める語として奈良時代から使われていた。「ぼっけー」「ぼれー」など世代や地方ごとにバラエティには事欠かない。

 いずれにしても、日常的に使用頻度の高い強調表現はどこへ行っても活力がある。

第25回 「しかも」「でら」「てんぽ」「ぶち」…強調表現は「とても」だけではない