第六回 「門の外の漢、門の前の子供」
これを書いているのは掲載のだいたいひと月前なので、正月の話題から入らせていただきます。
暮れに帰省をすませ、正月は東京で迎えた。
近所の小さい神社に初詣に行きがてら町を散歩し、のんびりした空気を味わったのだったが、門松というもののよさを再認識した正月でもあった。
あのいかにも「ザ・門松!」というような立派なもの以外にも、笹と松飾りをうまいこと組み合わせた楚々とした飾りなど、様々なバリエーションがある。
長いこと正月をやってきたが、あまり意識して見たことはなかったようだ。各種松飾りのたたずまいはとても新鮮であり、新年を迎えた門を飾るという行為はいいものだなあ、と素直に感じた。
そういえば正月にかなりの確率で耳にする「年の始めの~」で始まる唱歌があるが、あのタイトルが『一月一日』であることを、みなさん知っていましたか?
私はまったく知らなくて、昨年末に何かを調べていて偶然知ったのだった。
気にしたことすらなかったのだが、せいぜい『年の始めの』みたいなタイトルだろうくらいに思っていたので『一月一日』のストレートさは意外である。
よく耳にするクリスマスソングも、調べてみたら『12月25日』だった! みたいなことがあったりするといいのに、などと考えた。
門といえば、先日三重県の伊賀上野に取材旅行に行ったのだが、伊賀上野城のそばに、木の外壁の校舎がとてもいい小学校(上野西小学校)があり、その西門が「たのしいもん」、東門が「元気だもん」というのだ。
ほほえましい気持ちになったが、お城側の北門だけが「どんぐり門」と、ダジャレ的統一を欠いており、ここはぜひ
「心の上に刃をおくと書いて忍だもん」
にしてほしかったところだ。
門という漢字は(おとこ字、ではありません)わかりやすく両開きの扉の象形文字であるわけだが、じっと見つめてみると、門というよりは西部劇の酒場の扉を思い出す。ありますよね、押し開けて中に入ると、バネか何かで自動的にぎこんぎこん閉まるやつ。
西小学校的にいえば「バーボンが飲みたいもん」であろうか。
西部劇が好きだった自分としては、一度はあの扉をくぐってみたい気持ちがあるが、国内でもウェスタン系のテーマパークに行けば、それ風に作られた建物があったりするのか。
そもそもそういうテーマパークは現存しているのか、検索して調べるほどの熱意はなく、ましてや北アメリカ西部にその扉を押すために観光に出かけるというのも、旅の動機としてあまりに問題があるだろう。
どうやら「バーボンが飲みたいもん」をくぐることなく一生を終えることになりそうだが、まったくかまわないといえばかまわない。