第13回 お名前・御芳名…「返信はがき」のマナーこちらもおすすめ

第13回 お名前・御芳名…「返信はがき」のマナー

 

秋は、運動会に、紅葉狩、ハロウィーンなど催し物も様々ですが、結婚シーズンでもありますね。結婚式の招待状が届いたという方も多いでしょう。結婚式などの招待状には、通常出欠用の返信はがきが同封されていますが、この返信はがきの書き方に迷うという声をよく聞きます。書き方やマナーについて確認してみましょう。

まず、招待状が届いたら、取り急ぎ電話やメールで返事をする場合もあると思いますが、その場合も必ず返信はがきは送るのが礼儀です。ふつうは返信はがきで出欠の人数の確認をしますので、相手に手間をかけないためにも、親しい間柄だからといって電話やメールだけで済ませるのではなく、返信はがきの返送を忘れないようにしましょう。
さて、はがきの書き方ですが、通常、表面(→図1)は、返信先の住所と名前が印刷または手書きで記されていて、名前の下には「行」という文字が添えてあります。この「行」は差出人側が付けたもので敬称ではありませんので、斜線や二重線で消し、「様」に改めます。結婚式の返信では、返信は個人宛ですが、他の返信はがきでは、「○○商事  ××課行」のように、宛先が会社名・部署名などの団体や組織の名前である場合もあります。その場合は、「行」を「御中」に書き換えます。

次に、裏面(→図2,3)は、出席の場合は「御欠席」を二重線で消し、「御出席」の「御」の字も同様に二重線で消して、「出席」または「欠席」を○で囲みましょう。「出席」の下に、「いたします」や「させていただきます」と書き添えることもあります。
さらに、住所を書く欄の「御住所」の「御」も二重線で消し、名前の「御芳名」は、「御芳」を二重線で消します。「御芳名」の「芳」の字は消し忘れることも多いようですが、忘れずに消しましょう。
返信はがきにスペースがあるときは、ひと言メッセージを書くと、より丁寧でしょう。返信はがきは、出欠の意思がわかり、住所・氏名が書かれていれば基本的にはそれで済むものですが、言葉を書き添えれば、招待してもらったことへのお礼や欠席の際のおわびなども伝えられます。また、受け取る側も、ほんのひと言でも手書きの言葉が添えられていれば、嬉しさも増し、相手の気遣いも感じるものです。特に、欠席の場合は、何も書かないで返信するのは、招いてくれた相手にしても何だか素っ気なく、礼儀にも欠けますので、やはりひと言加えたほうが好ましいでしょう。それぞれのメッセージとしては、主に次のようなことを記すのが一般的です。

    

■出席の場合のメッセージ例
「おめでとうございます。当日お目にかかれるのを楽しみにしております。」
「このたびはおめでとうございます。お招きいただきましてありがとうございます。」
「喜んで列席させていただきます。」など

■欠席の場合のメッセージ例
「このたびはまことにおめでとうございます。○○さんの花嫁姿を拝見できず残念です。」
「おめでとうございます。出張の予定が入ってしまっておりまして、残念ながら出席できません。まことに申し訳ございません。」
「ぜひとも参上したいところでございますが、出張のため列席できません。申し訳ございません」など

欠席の場合、たとえば「あいにく風邪が長引いておりまして伏せっております」「親戚の法事と重なり、不本意ながら出席できません」のように病気や弔事の理由をそのまま書くのはたとえ実際にそうであっても、相手に余計な心配をかけたり、せっかくの慶び事に水を差したりする恐れもあります。理由を述べる場合でも、相手に余計な気遣いをさせないよう、「やむを得ない事情により」などとぼかして伝えるほうが好ましいものです。

さて、ここで先述の「御芳名」についてひと言申しますと、「芳名」とは「よい名」という意味です。ですから「芳名」だけでも敬意を含んでいるわけですが、それだけでは敬意が十分でないと考えられて、「御」の字を加えるようになったのであろうと言われています。
このような例はほかにも挙げられます。たとえば、「御尊名」「御高名」「御尊父」「御令息」などはみな、「尊名」「高名」「尊父」「令息」自体がすでに尊敬の意をもっているのに、「御尊父様」や「御令息様」のように「御」や「様」をともなった形で使われていますね。敬称以外でも、「御高著」や「御高誼(こうぎ)」のように、尊敬表現の「高著」「高誼」に「御」を付けて用いられている例もあります。これらは敬語の重複ではあっても、慣習として使われているものです。

最後に、「御出席」の「御」などの文字の消し方について付け加えておきましょう。通常は先に述べた通り二重線で消しますが、祝い事の返信の場合は、二重線で消すのではなく、「寿」や「賀」の字を上書きすることもあります。これは、祝い事の手紙の綴じ目に、「〆」ではなく「寿」や「賀」が使われることがあるのに同じく、縁起を重んじる日本人の慣習のよるものでしょう。
出欠の確認に便利な返信用のはがきですが、手紙を出す側も受け取る側も、互いに相手を敬う適切な表現を用いたいものですね。

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井上 明美
第13回 お名前・御芳名…「返信はがき」のマナー
2011-10-31

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