第27回 水っぽさを表す方言

 「わっ、このカレーしゃびしゃび!」。とても出来栄えを褒めている雰囲気ではない。そう、愛知では「水っぽい」ことを「しゃびしゃび」と表現するのである。「ゆるゆるのカレー」というわけだ。愛知のほか、岐阜、三重など東海地方では日常的に使われる表現で、「しゃびんしゃびん」と言う地域もある。本来ならもう少し粘り気があってしかるべきものの、とろみが足りなかったりゆるかったりしたときに使う。ややマイナス今回の一枚:クリックすると大きくなりますのイメージが含まれているようで、共通語の「さらさら」とはちょっとニュアンスが異なるようだ。さらっとしたインドカレーを「しゃびしゃび」と言われると、どうもおいしそうには聞こえない。

 関西では「しゃばしゃば」。その語感のせいか、さらに水っぽさを増大させている感じが伝わってくる。

 音形の似ている共通語の「びしゃびしゃ」も「ばしゃばしゃ」も水と関係のある表現だから面白い。

 しかし、同じ似ていることばでも、牛肉の「しゃぶしゃぶ」となれば別格で、高級感が漂ってくる。

 「どぼどぼ」。大量の液体が流れてくる感じだ。共通語の「だぼだぼ」と似ている。椎名誠の『気分はだぼだぼソース』というエッセイがあるが、やはりコロッケにはたっぷりソースをかけて食べたい。

 話がそれたが、その「どぼどぼ」、福井、滋賀、京都では「雨で服もうどぼどぼや。」のようにずぶ濡れになった様子を表す。「どぼ濡れ」という言い方もあるようだ。

 富山、石川では「ずぶ濡れの様子」は「ずくずく」。関西や徳島でも使われている。この「ずくずく」、実は江戸時代から使われている古語の残存だ。東京日本橋生まれの谷崎潤一郎の小説にも登場するから、使用地域はもっと広がっていたに違いない。

 香川は「ずぼずぼ」。「ずぼになった」とも言う。「ずくずく」同様、ちょっと水っぽいイメージからは遠のいてきた語感だが、むしろずぶ濡れになってしまったときの気分を嫌そうに表現しているようにも感じられる。

 地域限定の表現であっても、擬態語を使った言い方には共通したイメージがあるところが面白い。

 いやいや今回は水っぽい話になってしまった。