第1回 わが若き日の調べもの
2015年3月2日(月)山根一眞
父の助言は「辞書を引け!」
オリジナル情報であれ引用転載であれ、自分の眼で確かめ、自分の足で歩き、事実、真実をみきわめ、わからないことは「わからない」と断った上で記すことが、情報の発信者が守らねばならない最低限の心得だ。
およそ45年以上にわたり出版、ジャーナリズムで仕事をしてきた私は、そのことがいつも頭にあった。
こういう、今の時代のあふれる情報のありようを踏まえると、正しい(少なくともオリジナルの)情報を「調べる」ためには、それなりの「技」が欠かせないことになる。
「調べもの極意伝」という連載を始めることにしたのは、その「技」を広く伝えたいと思ったからでもある。
私は子供時代に、テレビを見ていてわからないことがあって父に質問すると、必ず、「辞書を引け!」と言われた。
辞書や事典の記述は、その分野の専門家が「署名入り」で記している。
いい加減な記述をすれば、その分野の専門家から糾弾されることになるので、執筆者は真剣な思いで書く。それが辞書であり事典だ。
私の父は、いくつかの百科事典でかなりの数の項目を執筆していたからこそ、そういう助言をしてくれたのだと思う。この父の助言によって、私は、最初の基礎知識を得るために、まず辞書や事典を読み大事な第一次情報源を得ることを心がけてきた。

便利すぎて困る「Wikipedia」
ネット上ではWikipedia(ウィキペディア)という便利な百科事典が広く利用されている(もちろん私も支援金を払った上で利用している)。
だが、これを、まるごと「コピペ」したウェブもとても多い。
Wikipediaは、ひとつの項目を数多くの人が共同で作り上げていくという人類史上前例のない文化活動だが、執筆者、加筆者とも署名がないという大きな問題点がある。
従来の百科事典のように、執筆内容に対して責任の所在が不明なのだ。
怪しい内容、不十分な記述に対しては、その旨のコメントが添えられる機能があるものの、Wikipediaは常に未完の「途上の知の集積庫」であるため間違いも多い。そこで、Wikipediaを存分に利用し、正しい、オリジナルの情報を得るためには、コツがある(それについても追って披露します)。

また、この「調べもの極意伝」では、日常生活や仕事で生じた「疑問」の、正しい「答」や「発見」を単にネット検索に頼るだけではなく、「自分自身」で手にしていく方法も伝えていきたいと思っている。
第1回 わが若き日の調べもの
2015-03-02