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第3回 図書館で語った「図書館」
2015年4月6日 山根一眞

1900年以上前からあった「漢字の成り立ち」6分類

 この「図」「書」「館」の字源を調べていて、どの辞書、辞典でも目につく言葉がつきまとっていた。
 「字源 會意」
 この気になる言葉、「會(会)意」って何だろう?
 「ジャパンナレッジ」の『日本大百科全書(ニッポニカ)』で、即、出ました。
 「會意」とは、『六書』による漢字の構成、成り立ちの6分類のひとつで、
 2つ、あるいは2つ以上の字を合成したもの
 を意味する言葉だった。
 では、『六書』って何なの?
 これも、「ジャパンナレッジ」で即判明。
 漢字の成り立ちを、後漢の時代、西暦121年に許慎(きょしん)という人が、『説文解字(せつもんかいじ)』で披露していた「6つの分類」のことと知った(ちょっと不勉強でした)。それにしても約1900年も前に漢字の成りたちを分析して、6分類していたとは何とエライこと! 今もお元気なら、『許慎先生の調べもの極意伝・特選版』の連載をしてもらいたいところでありますね。
『六書(りくしょ)』による漢字の成りたちの6分類。「ジャパンナレッジ」の『日本大百科全書』の説明を整理し作成した表。作表・山根一眞
 では、許慎先生の『説文解字』とは、どんな本なのか。
 字のルーツのルーツをたどるには、何はともあれ、『説文解字』にいきつかねばならないのだから、どうしてもこの本を見たい。
 調べたところ早稲田大学の「デジタル書籍アーカイブス」に8点が見つかった。もっともいずれも出版年は19世紀なのがちょっと残念だったが、オリジナルの雰囲気は楽しめます(2点は出版年不明だが19世紀でしょう)。
 そのスキャン画像のページをくくりながら見た『説文解字』は、とてもシンプルな記述でおもな字の成り立ちを記している字典だとわかった。
 となると、図書館の「圖」という字もあるはずだと探してみた。この1文字を探すのはえらく大変だったが、やっと見つけました。
『説文解字』(1873年、同治12年、廣州の書店、富文斎刊)の表紙と「圖」の字源の記述。出典:早稲田大学デジタル書籍アーカイブス。
 きわめてシンプルな記述ではあるが、なるほど、『日本大百科全書』も『大字典』も『大辭典』も『字通』も、字源は『説文解字』をベースにしていることがわかったのでした。
 紆余曲折しつつ「図」「書」「館」の字源を調べて得たのは、大きな驚きもない結論ではあったが、私にとっては、これらの字の背景には深い世界があること、それを記録している多くの基礎資料について学び知ることができたのは大きな成果だった。
 「調べもの」とは、調べる過程で、多くのことを学ぶことなのだから、結論がありきたりでも大きな知的至福感が得られるのです。皆さんも、どんな字でも、ちょっと字源を調べてみて下さい。<第3回了>
●次回は、4月20日に更新予定です。

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第3回 図書館で語った「図書館」
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著者プロフィール
山根 一眞(やまねかずま)
 ノンフィクション作家・獨協大学特任教授
 1947年、東京生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。20代からジャーナリズムの仕事を開始。先端科学技術や情報分野、アマゾン環境問題など広いテーマで「謎」を追い求めてきた。NHK総合テレビでキャスターを7年こなし、北九州博覧祭では「ものつくりメタルカラー館」の、愛・地球博では愛知県の総合プロデューサーをつとめた。2009年から母校で経済学部特任教授として環境学や宇宙・深海、生物多様性などをテーマに教鞭もとっている。3.11で壊滅した三陸漁村・大指の支援活動も続けている。主な著書に単行本と文庫本25冊を刊行した「Made in Japan」を担うエンジニアたちとの対談『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)、『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス、東映で映画化)、『小惑星探査機はやぶさ2の大挑戦』(講談社)など多数。『日経ビジネスONLINE』では「ポスト3.11日本の力」「山根一眞のよろず反射鏡」を連載中、福島第一原発の廃炉技術も追い続けている。理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、宇宙航空研究開発機構客員、福井県文化顧問、2018年国民体育大会(福井県)式典総合プロデューサーなど。日本文藝家協会会員。

山根一眞オフィシャルサイト
http://www.yamane-office.co.jp
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