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第14回 鳥と恐竜のミッシングリング(後編)
2016年4月21日 山根一眞

賛成しない人たち<論文3>

 1998年Caudipteryx (カウディプテリクス)は古生物学にとって大きな出来事だった。
 Caudipteryx はシチメンチョウほどの大きさの生き物で長く強い後ろ脚を持っていて、おそらくは走るのが得意だったと考えられる。良く発達した短い翼のような前足を持っていて、左右対称の風切り羽根があった。
 これらは飛ぶには短すぎるのは明らかだった。
 Caudipteryxは保存状態の良い叉骨と小さな三角形に近い頭骨を持っていた。口の前の方にだけ数少ない長い歯があって、Caudipteryx の砂のうのあった位置には、たくさんの胃石があった。
 しかしながら、獣脚類恐竜から鳥類が発生したという考えに賛成しない人たちもいる。
 彼らは Caudipteryx は獣脚類恐竜ではなく鳥であると考えた。
 なぜなら鳥のような翼を持ち、完成された羽根を持っていたからである。
 分岐論による分析によればCaudipteryx は、Oviraptor (オヴィラプトル)に近い恐竜で、鳥類よりもずっと原始的である。
 1999年平成11年)前半に国際シンポジウム「鳥類の起源と初期の進化に関するオストロームシンポジウム」がイェール大学で開かれた。
 この期間中に世界の様々な大陸から集まったおよそ50名の科学者たちの間で、
「恐竜は全く絶滅してしまったのではない。現代の鳥は明らかに恐竜の生きている姿である」
という考えが広く受け入れられた。イェール大学でおこなわれた「オストロームシンポジウム」は画期的な学術会議だった。
 ここで最近の中国の発見である Sinosauropteryx(シノサウロプテリクス)、Protarchaeopteryx (プロターケオプテリクス)、Caudipteryx (カウディプテリクス)に基づいて鳥類の起源についての問題が解決したからである。
 1999年のイェール大学でのシンポジウム以来、我々はある疑問にもっと注意を向けるようになった。
 例えば、「鳥類の定義とはなにか?」そして「獣脚類のどのグループが鳥類と最も近いのか?」などである。

2000年代の羽毛恐竜研究<論文4>

 1999年から2000年の間、徐星(Xu Xing)と他の研究者が3例の羽毛を持った獣脚類恐竜を報告した。
 Beipiaosaurus(ベイピヤオサウルス)、Sinornithosaurus(シノルニトサウルス)、Microraptor(ミクロラプトル)である。
 2001年(平成13年)の4月には Ji QiangMark NorellGaoKe-qinJiShu-anRenDong が小型で全身を羽根で覆われた Dromaeosaurus(ドロマエオサウルス類)の Sinornithosaurus(シノルニトサウルス)を報告している。
 2002年平成14年)には、Mark Norell、 Ji QiangGao KeqinYuan ChongxiZaoYinbinWang Lixia 等が遼寧省西部で「現代的な羽根」を持った小型の恐竜である Dromaeosaurus (ドロマエオサウルス類)の Microraptor(ミクロラプトル)を発見した。
 
 2002年には Ji Qiang他の研究者が2種類の鳥類に分類される Shenzhouraptor(シェンゾウラプトル)と Jixiangornis(ジシャンゴルニス)を最初に遼寧省西部のJiufotang層で報告した。
 2003年平成15年)には Ji Qiangと他の研究者が遼寧省西部のYixian層の最下部で Ornithomimosauria (オルニトミモサウルス科)の獣脚類であるShenzhousaurus(シェンゾウサウルス)を発見報告した。
 2004年平成16年)に Sunny H. Hwangは、Mark NorellJi QiangGao Keqinらとともに、遼寧省西部のYixian層で発掘された新しい Compsognathus (コンプソグナトス科)の獣脚類である Huaxiagnathus(ヒュアキシアグナトゥス)を記載した。
 2005年(平成17年)のはじめには新しい長い尾を持った鳥類に分類される鳥 Jinfengopteryx(ジンフェンゴプテリクス・華美金鳳鳥)が中国河北省のFengning郡の白亜紀前期のQiautou層からJi QiangJi Shu-anによって発掘されている。
 彼らは Jinfengopteryx(ジンフェンゴプテリクス)は類縁である始祖鳥と非常に多くの類似点がある。従って Jinfengopteryx(ジンフェンゴプテリクス)の発見は我々が初期鳥類の進化を理解する上で大変重要であるとした(註・後の系統解析の研究などから現在はトロオドンの仲間とされている)。
 2006年(平成18年)には中国甘粛省Changma盆地の白亜紀前期の地層からYou Hailu と他の研究者が多数の Gansus(ガンスス)の標本を発見した。これは真鳥類の最も古い記録である。
 2007年(平成19年)には Ji Shu-anJi Qiangと他の研究者が新しい巨大なCompsognathus (コンプソグナトス科)獣脚類 Sinocalliopteryx(シノカリオプテリクス)を中国、遼寧省西部のYixian層下層から報告している。
 
 これらの中国での発見は現生種と絶滅種を含めたすべての鳥類が、小型の肉食獣脚類恐竜から発生したとの説を支持している。
 別の言い方をすれば、現代の鳥類は小型獣脚類恐竜の羽根を持った、生きている子孫である。
 2000年(平成20年)6月30日、中華人民共和国主席江沢民は、「古生物学は中国の科学者が広範囲に及ぶ国際協力をおこなう主要な部門であり、中国と他の国々に利をもたらすものである」と指摘した。
 1979年昭和54年)から中国は「開放政策」と「社会科学改革」を国家政策としており、これにより国際科学協力を大いに推進し、中国の科学研究の発達に進歩をもたらし、世界の人々に対する科学情報の効率的な普及を潤滑にした。遼寧省西部における中生代熱河生物群(Jehol biota)の協力的共同研究、特に鳥類の起源の研究はこのような国際協力から利益を受けた多くの科学研究の代表的な結果の1つである。最後に、私は中国国土資源省、中国科学技術省、中国国家自然科学基金のご支援に感謝するものである。
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 以上が、「図解版・季強教授の中国の羽毛恐竜と鳥類の起源」です。
第14回 鳥と恐竜のミッシングリング(後編)
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著者プロフィール
山根 一眞(やまねかずま)
 ノンフィクション作家・獨協大学特任教授
 1947年、東京生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。20代からジャーナリズムの仕事を開始。先端科学技術や情報分野、アマゾン環境問題など広いテーマで「謎」を追い求めてきた。NHK総合テレビでキャスターを7年こなし、北九州博覧祭では「ものつくりメタルカラー館」の、愛・地球博では愛知県の総合プロデューサーをつとめた。2009年から母校で経済学部特任教授として環境学や宇宙・深海、生物多様性などをテーマに教鞭もとっている。3.11で壊滅した三陸漁村・大指の支援活動も続けている。主な著書に単行本と文庫本25冊を刊行した「Made in Japan」を担うエンジニアたちとの対談『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)、『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス、東映で映画化)、『小惑星探査機はやぶさ2の大挑戦』(講談社)など多数。『日経ビジネスONLINE』では「ポスト3.11日本の力」「山根一眞のよろず反射鏡」を連載中、福島第一原発の廃炉技術も追い続けている。理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、宇宙航空研究開発機構客員、福井県文化顧問、2018年国民体育大会(福井県)式典総合プロデューサーなど。日本文藝家協会会員。

山根一眞オフィシャルサイト
http://www.yamane-office.co.jp
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