第 4回 「離合困難」っていったいどういう意味?

 「離合困難」、京都の郊外に堂々と立てられている道路標識である(写真)。警察署の記名もあり公共性が極めて高い。お上の威光か、材質も立派、風格さえ感じさせる。ところが、そこに書かれてい今回の一枚:クリックすると大きくなりまする内容はよそ者には全く意味不明なのである。お上が発する情報がチンプンカンプンとはどういう了見だ!そんないちゃもんをつけたがる輩もいるに違いない。脇に添えられた「幅員狭小」。カタカナ語の氾濫はけしからんとの風潮もあるが、漢字のオンパレードも厄介だ。気を取り直して「幅員狭小、離合困難」を何とか解釈すれば、道幅が狭いので進入していくと何か困難なことがあるのだろうと予測はつくのだが。しかしこれはドライバー向けの情報。悠長に意味を解釈している余裕もあるまい。文句を並べ立てては見たものの、地元では意思の疎通に全く支障はないのである。まさに「離合」は共通語として活躍しているのだ。

 さて、この「離合」とは「狭い道で車がすれ違う」という意味で、警察や自動車学校ではごく当たり前の表現らしい。狭い道では「離合注意」「離合場所」という標識があったりするようだ。遠隔の福岡、大分でも普通に使われているが、西日本のところどころで目撃したとの声も耳にする。よくよく調べていくと昔から鉄道の世界では普通に使われていることがわかる。インターネットで鉄道ファンのサイトを覗くと、「E231系と211系との離合」のように、列車同士がすれ違う瞬間をとらえた動画や画像が、まさに“美”を競うがごとくアップされているではないか。鉄道ファンにはその「すれ違い」がたまらないらしい。鉄道の世界だけではない、国土交通省の事業報告書の中には「離合困難箇所を解消する道路整備」との表現が多々見られる。なんと「離合」は交通の世界における共通語だったのである。

 それにしても「離合集散」という四字熟語なら馴染みはあるが「離合」とは聞き慣れない。ちなみに国語辞典を引いてみると、採録されてはいるが「離れることと合うこと」との文字通りの説明だけで、「すれ違い」の意味は記述されていない。いずれにしても専門用語が地域限定で一般に開放されてしまったのである。

    
    
写真
    
    
    
     写真提供者:鳥谷善史さん    
第 4回 「離合困難」っていったいどういう意味?